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事務所・工場の建設にかかる税金は?事業用建物の税金の種類と計算方法を解説

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事業拡大や新規拠点のために、事務所や工場、倉庫といった事業用建物の建設を計画する際、建築費と同じくらい重要なのが「税金」の把握です。

「建物にかかる税金は住宅と同じだろう」と考えていると、思わぬコスト増に直面する可能性があります。事業用建物は住宅と異なり、軽減措置の対象外となる税金があったり、事業用ならではの「償却資産税」が発生したりするためです。

本記事では、事業用建物を建てる時(取得時)と持つ時(保有時)にかかる税金の種類、計算方法、そして資金計画を立てる上で知っておくべき注意点を解説します。

 

事業用建物を建てる際にかかる税金の全体像

事業用建物を建てる際にかかる税金の全体像のイメージ画像

事業用建物の税金についてまず理解すべきなのは、「建てる時(イニシャルコスト)」だけでなく、「建てた後(ランニングコスト)」も継続的に税金が発生するという点です。ここでは、建物の一生にかかる税金の全体像と、住宅建設時との大きな違いについて解説します。

建物を取得する際には、契約書の印紙代や登記費用、不動産取得税などがかかります。そして完成後は、毎年1月1日時点の所有者に対して固定資産税や都市計画税が課税されます。

ここで特に注意が必要なのが、事業用建物は「住宅用地の特例」が適用されないため、土地にかかる固定資産税が高額になりやすい点です。また、工場や倉庫の場合、建物本体とは別に、機械設備や外構工事部分に対して「償却資産税」という独自の税金がかかることも、住宅との大きな違いです。これらを事前にシミュレーションしておくことが、健全な事業運営の鍵となります。

 

建物を「建てる時(取得時)」にかかる税金

建物を「建てる時(取得時)」にかかる税金のイメージ画像

建物の建築計画が始まると、契約から引き渡し、そして登記完了までの各段階で異なる税金が発生します。ここでは、取得時に一度だけ支払う必要がある4つの主要な税金(印紙税、登録免許税、不動産取得税、消費税)について、その仕組みと計算の目安を解説します。

印紙税

印紙税は、建築工事の「工事請負契約書」や、土地購入時の「不動産売買契約書」などの課税文書を作成する際に課される税金です。契約書に収入印紙を貼り、消印を押すことで納税したことになります。

税額は契約金額によって段階的に定められています。建設工事の請負契約書には軽減措置が設けられている期間があるため、以下の表を参考に予算を見込んでおきましょう。

【表1】建設工事請負契約書にかかる印紙税額

契約金額(記載金額) 本則税率 軽減税率(2027年3月31日まで)
1千万円超 〜 5千万円以下 2万円 1万円
5千万円超 〜 1億円以下 6万円 3万円
1億円超 〜 5億円以下
10万円 6万円
5億円超 〜 10億円以下 20万円 16万円

※最新の軽減措置期間については国税庁の情報を確認してください。

登録免許税

建物を新築した際や土地を購入した際には、法務局で登記手続きを行います。この登記にかかる税金が登録免許税です。

新築した建物の所有権を明らかにする「所有権保存登記」や、土地の所有権を移転する「所有権移転登記」などが対象となります。

税額は「固定資産税評価額(または課税標準額)× 税率」で計算されます。

新築建物の所有権保存登記の税率は原則0.4%ですが、特定認定長期優良住宅などの場合は軽減されます。ただし、一般的な事業用建物の場合は原則通りの税率で計算されることが多いため、予算取りには注意が必要です。

不動産取得税

不動産取得税は、土地や建物を取得した際に一度だけ課される地方税(県税)です。建物の引き渡しから半年〜1年後など、忘れた頃に納税通知書が届くことが多いため、資金を残しておく必要があります。

税額の計算式は「固定資産税評価額 × 税率」です。
標準税率は4%ですが、土地や住宅に関しては3%に軽減される特例措置がとられています(※2027年3月31日まで)。

事業用建物(非住宅)の場合、建物部分の税率は原則通り4%となるケースが一般的です。住宅のような大幅な控除枠が適用されないことが多いため、まとまった金額になることを想定しておきましょう。

消費税

土地の購入代金には消費税はかかりませんが、建物の建築工事費や設計料、不動産仲介手数料には消費税(10%)が課税されます。

数千万円〜数億円規模の建設工事となる場合、消費税額だけでも非常に大きな金額になります。ただし、建設主体が課税事業者である法人や個人事業主の場合、支払った消費税は確定申告によって「仕入税額控除」の対象となります。

特に、売上の預かり消費税よりも支払った消費税の方が多い年度(大規模な建設を行った年など)は、申告により消費税の還付を受けられる可能性があります。

 

建物を「所有している時(保有時)」にかかる税金

建物を「所有している時(保有時)」にかかる税金のイメージ画像

建物が完成し事業を開始した後も、その不動産を所有している限り毎年かかり続ける税金があります。「固定資産税」と「都市計画税」はよく知られていますが、事業用建物において見落としがちなのが「償却資産税」です。ここでは保有時にかかる3つの税金について解説します。

固定資産税

固定資産税は、毎年1月1日時点で土地・家屋を所有している人に課される市町村税です。
基本的な計算式は「固定資産税評価額(課税標準額)× 1.4%(標準税率)」となります。

【重要】事業用ならではの注意点
住宅用の土地には「住宅用地の特例」があり、200平米以下の部分は評価額が1/6に減額されるなどの優遇措置があります。しかし、店舗・事務所・工場などの事業用建物の敷地(非住宅用地)には、この特例が適用されません。
そのため、同じ広さの土地であっても、事業用として使用する場合は住宅用よりも固定資産税額が大幅に高くなる傾向があります。

【表2】土地の固定資産税における特例の有無

土地の区分 200㎡以下の部分
(小規模住宅用地)
200㎡超の部分
(一般住宅用地)
住宅用地
(マイホーム・賃貸住宅)
評価額の 1/6 評価額の 1/3
事業用用地
(店舗・事務所・工場)
減額なし
(評価額の約70%)
減額なし
(評価額の約70%)

 

都市計画税

都市計画税は、原則として「市街化区域」内に土地や建物を所有している場合に、固定資産税とあわせて課税される税金です。道路や公園などの都市計画事業の費用に充てられます。

計算式は「固定資産税評価額(課税標準額)× 0.3%(制限税率)」が一般的ですが、自治体によって税率が異なる場合があります。

固定資産税と同様に、事業用の土地には住宅用地のような大幅な軽減措置が適用されないため、あわせて資金計画に組み込んでおく必要があります。

 

償却資産税

工場や倉庫を建設する場合、特に意識しなければならないのが「償却資産税(固定資産税の一種)」です。
土地や建物(家屋)には固定資産税がかかりますが、それ以外の「事業用資産」に対しても税金がかかります。

償却資産税の税率は1.4%で、すべての償却資産の評価額合計が150万円以上(免税点)の場合に課税されます。毎年1月末までに申告書の提出が必要となる点も、通常の固定資産税とは異なるポイントです。

どこまでが「建物(固定資産税)」で、どこからが「設備(償却資産税)」なのかは判断が難しいため、以下の表を参考にしてください。

【表3】家屋(建物)と償却資産の区分例

土地の区分 対象となる税金 具体例
家屋
(建物全体)
固定資産税 屋根、外壁、基礎、屋内の電気配線(建物一体)、給排水設備など
売却資産
(事業用設備)
償却資産税 受変電設備(キュービクル)、外構工事(アスファルト塗装・フェンス)、機械装置、看板、ルームエアコンなど

 

事業用建物の税金を抑える・経費にするポイント

事業用建物の税金を抑える・経費にするポイントのイメージ画像

事業用建物は住宅に比べて税金の優遇措置が少ないのが現実ですが、法人ならではの「経費化」や「優遇税制」を活用することで、実質的なキャッシュフローを改善できる可能性があります。ここでは、建設前に知っておきたい節税・経費化のポイントを紹介します。

減価償却による経費化

建物や設備にかかった費用は、一度に全額を経費にするのではなく、法定耐用年数に応じて分割して経費計上します(減価償却)。

建設費用の見積もり段階で、「建物(躯体)」と「附属設備(電気・給排水など)」を明確に区分しておくことが重要です。建物躯体は耐用年数が長い(鉄骨造で30〜50年程度)ですが、附属設備は15年程度と短く設定されています。

設備部分を適切に分けることで、建設初期の償却費を大きく計上でき、法人税を圧縮する効果が期待できます。これを「償却にメリハリをつける」と言い、早期の投資回収につながります。

 

中小企業向けの優遇税制の活用

中小企業が設備投資を行う際、国が定める認定制度を活用することで、税制上の優遇を受けられる場合があります。

代表的なものに 「中小企業経営強化税制」や「中小企業投資促進税制」 があります。これらは現在、適用期限が 2027年3月31日まで 延長されており、設備投資を後押しする強力な制度です。※一部廃止になっているもがあります

一定の要件を満たす設備(機械装置や器具備品、一定の建物附属設備など)を取得した場合、以下のいずれかを選択できます。

  • 即時償却:初年度に取得価額の全額を経費計上する。
  • 税額控除:取得価額の7〜10%相当額を法人税から差し引く。

特に「中小企業経営強化税制」などで優遇を受けるには、原則として 設備取得(引き渡し)前に計画の認定を受ける 必要があります。 建物が完成した後からでは申請できないケースが多いため、必ず建設を検討する初期段階で税理士や建設会社へ相談することをおすすめします。

 

まとめ

事業用建物の建設には、印紙税や不動産取得税などの「取得時の税金」と、固定資産税や償却資産税などの「保有時の税金」がかかります。特に以下の点は、住宅建設とは大きく異なるため注意が必要です。

  • 土地の固定資産税: 住宅用地の特例(1/6減額)が使えないため割高になる。
  • 償却資産税: 建物以外の機械や外構設備にも毎年1.4%の税金がかかる。
  • 消費税: 建物分は課税されるが、還付を受けられる可能性がある。

事業用建物の計画では、建築費だけでなく、これらの税金を含めたトータルコストでの資金計画が欠かせません。

協和建設では、土地探しの段階から、事業用建物の設計・施工、そして税務面を考慮したコストシミュレーションまで、お客様の事業拡大をトータルでサポートいたします。工場・倉庫・店舗の建設をご検討の際は、ぜひお気軽にご相談ください。

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