倉庫火災を未然に防ぐ対策とは? 必要性や倉庫火災の原因とともに解説

倉庫火災が発生すると、自社だけでなく近隣住民や関係先企業にも大きな影響を与えるため、未然に防ぐことを念頭に置いた対策が必要です。
この記事では、倉庫火災対策が必要な理由や、倉庫火災の主な原因、そして具体的な対策方法をご紹介しています。火災対策を万全にし、安心して働ける倉庫環境を作りましょう。
倉庫における火災対策の必要性
倉庫は、万が一火災が発生した場合に、被害が甚大化しやすい傾向にあります。主な理由としては以下が挙げられます。
- 大量の保管物が密集して保管されている
- 面積の広さに対して在中している人数が少ないため、火災に気付きにくい
- 温度変化や保管物の日焼けを防ぐために窓や出入り口が少なく、火災発生時に放水が届きにくい
一度火災が起きれば、たとえ消火できたとしても、大量の保管物の焼失や、消火活動による水濡れは避けられません。火災によって物流が滞れば、自社だけでなく、取引先にも大きな影響を与えます。何より、倉庫内の従業員の命が危険にさらされます。
そのため、適切な予防を行い、火災リスクを最小化または起こさないことが重要です。
倉庫火災の主な原因
倉庫における火災の主な原因として、以下の4つをご紹介します。
- 電気機器による発火
- 工事作業による発火
- 保管物による発火
- タバコや放火など人的要因による発火
それぞれ見ていきましょう。
電気機器による発火
電気機器が経年劣化していたり、堆積した埃に引火したりすることが原因で、火災が発生することがあります。電気機器による火災は、発火地点が目に付きにくいため、初期消火が遅れてしまい、大規模な火災へと発展する恐れがあります。
倉庫内業務を自動化している場合は、使用する電気機器が多いため、とくに注意が必要です。例えば、電源供給のために常に電源コードを挿したままにしている場合、埃が原因で火災につながるかもしれません。
電気機器の火災は、普段のチェックやメンテナンスが予防対策につながります。以下の項目を定期的にチェックし、必要に応じたメンテナンスを行って火災の原因を取り除きましょう。
- 過度なタコ足配線など無理な使い方をしていないか
- コンセントは断線していないか
- 埃が堆積していないか
工事作業による発火
外部の作業員による工事作業によって火災が発生することもあります。例えば、溶接工事やウレタンの吹き付け作業などの最中に発生した火花が、周囲の可燃物に引火するケースなどが挙げられます。
こういった火災は、工具の使い方について注意喚起を行うとともに、工事作業を行う場所の近くに燃えやすいものを置かないなど、環境を整えることも予防対策に有効です。
また、倉庫内で作業をする際のルールを明文化し、外部の作業員にもすぐに伝達できる状態にしておきましょう。
保管物による発火
木材チップ、堆肥などの自然物や油侵物、塗料、セルロイド、RDFなどは気温や湿度など環境の変化によって発火の原因になる場合があります。
倉庫で保管している資材や商品のなかに、これらの素材を含むものがあるかを明確にしましょう。ある場合は、適切な方法で管理する必要があります。
なお、上記以外にも、発火の原因になりやすいものは存在します。なかでも危険物に区分されるものは、市町村長からの許可を受けた施設以外では取り扱うことができません。
ただし、消防法において、普通の倉庫でも指定数量の5分の1未満であれば取り扱うことができます。その場合も、発火しないよう万全な状態で行いましょう。
タバコや放火など人的要因による火災
休憩中に吸ったタバコや、秋から冬にかけて使用するストーブなどが火災の原因になる場合もあります。そのためタバコを吸うスペースの徹底や、火の始末についての注意喚起を行うことが必要です。
また、従業員や不審者による意図的な放火による火災も事例としてあるため、倉庫のセキュリティを高め、不審な動きをさせない環境づくりを行うことが対策になります。
倉庫火災を防ぐための対策
倉庫の火災を防ぐために、次の6つの予防策を徹底しましょう。
- 消防設備の設置・点検を徹底する
- 定期的に倉庫内外を清掃・点検する
- 敷地内の火元管理を徹底する
- 従業員の防災教育を行う
- 火災対策マニュアルを作成・更新する
- セキュリティ対策を行う
これらの対策はそれぞれが一つの災害の原因に対応しているのではなく、横断的に対応しているため、複数取り入れることで火災への対策が強化できます。
消防設備の設置・点検を徹底する
倉庫の管理者、所有者、占有者などの防火対象物の関係者は、火災発生時に消防設備が速やかに動作するように設置・点検を徹底する必要があります。
倉庫には消防法に則った火災報知器やスプリンクラーなどの消防設備の設置と、定期点検が義務付けられています。定期点検には、半年に1度の「機器点検」と1年に1度の「総合点検」があり、どちらも行わなくてはなりません。
点検を行う建物が以下の条件を満たす場合は、消防設備士または消防設備点検有資格者に依頼し点検を実施する必要があります。
- 延べ面積1000㎡以上の特定防火対象物
- 延べ面積1000㎡以上の非特定防火対象物で、消防長または消防署長が指定するもの
- 特定一階段など防火対象物
- 全域放出方式の二酸化炭素消火設備が設置されている防火対象物
なお、条件を満たさない場合は防火対象物の関係者が実施できますが、点検できるのは以下の4つのみとなっています。
- 消火器
- 非常警報器具
- 誘導標識
- 特定小規模施設用自動火災報知設備
この際、消防庁が発行しているマニュアルを参考に行うとスムーズに点検が行えるので、点検前に目を通しておくのがおすすめです。
定期的に倉庫内外を点検・清掃する
電気機器による発火や保管物の自然発火などが火災の原因となる以上、倉庫内の備品や保管物、および建物周辺の清掃や点検、整理整頓を行うことは欠かせません。とくに、次の箇所は念入りに点検してください。
- 電気機器のコードの点検・整備
- 庫内の温度・湿度点検
- 建物周辺の放置物のチェック
電気機器のコードの点検・整備
電気機器のコードの点検・整備する際は、電気機器の配線を整理してコードの断線を防いだり、コンセントプラグに溜まったほこりを除去したりしましょう。
また、倉庫の雨漏りが原因で電気コードから発火し、火災につながる事例もあるため、併せて建屋の劣化状況も確認しておくことが望ましいです。
庫内の温度・湿度点検
自然発火の可能性がある保管物のなかには、空気中の成分と反応することで発火するケースもあります。そのため、倉庫内の適切な換気や温度・湿度管理が必要です。
保管物に自然発火の可能性があるのかを把握しておきましょう。
建物周辺の放置物のチェック
倉庫の周囲に可燃物が放置されている場合、放火されたり、万が一火事になった際に延焼したりするリスクが高まります。建物の周囲を定期的に巡回し、保管物が指定の格納場所外に放置されていないか、引火しやすいごみが放置されていないかを確認しましょう。
また、防火シャッターなど消防設備の作動を妨げる位置に、保管物や不要な放置物が置かれていないかもチェックしてください。
敷地内の火元管理を徹底する
倉庫内で火災を起こさないためには、敷地内の火元管理を徹底することが重要です。
例えば、喫煙所を設ける場合は、発火物や引火する可能性のある保管物から遠く離れた場所や、空気の流れの良い場所にすると、タバコの火による火災を防げます。
また、火をつけたらその場を離れない、吸い殻は必ず水につけて完全に火が消えてから捨てるといったルールを設けることも有効です。
従業員の防災教育を行う
消防設備の使い方や火災原因の共有などの防災教育を行い、従業員の防災リテラシーを高めましょう。
定期的な防災教育は、電気機器や保管物の取り扱い方を振り返るきっかけになり、火災の原因となる行動を減らす効果が期待できます。さらに災害時にも落ち着いた行動が可能となり、被害の甚大化リスクを低減できるでしょう。
防災教育を従業員に行うにあたっては、まず倉庫の持ち主や責任者といった管理者層が、消防設備の使用方法や消防のルール、火災のリスクを理解し、火災時にすぐに対処できるようにしておかなければいけません。
過去の火災事例や消防庁のマニュアルなどを参考に防災教育の方向性を定め、従業員への教育内容に落とし込んでいくと良いです。
火災対策マニュアルを作成・更新する
消防に関わるルールや注意点を従業員がすぐに見られるようなマニュアルにしてまとめ、内容を共有することも、火災対策になります。
マニュアルは、以下のように火災の原因別に章立てしてまとめると、従業員はもちろん、外部の業者にもルールを伝えやすくなるでしょう。
- 電気機器の清掃・確認
- 倉庫内で工具の取り扱い方
- 自然発火の原因となる資材・商品の保管方法
- 火を扱う際の注意喚起
また、定期的に内容を更新することも重要です。更新内容はその都度周知することで、継続的に防災意識を高められ、いつでも火災に対応できる組織を作ることができます。
マニュアルは紙媒体と電子媒体を用意し、火災発生時に通信状況やデバイスの有無に関わらず、すぐに確認できるようにすることで、迅速な対応につながります。
セキュリティ対策を行う
セキュリティ対策を実施することで、不法侵入をともなう放火や、不正な場所への喫煙を抑止でき、火災の予防につながります。また、万が一火災が発生した際にも早期に発見し、迅速かつ適切な初期対応が可能になるでしょう。
セキュリティ対策として効果的な商品は以下の2点です。
- 監視カメラ
- 火災の発生に気付きやすくなり、早期対応が行える。
- また、敷地の外側に設置することで外部からの侵入を抑制できるほか、映像データが火災の原因究明や放火の証拠になる
- 入退室管理システム
- 不審者の侵入や危険物の持ち込みを防ぐことができる
- 夜間や休業中の入場制限を行うことでセキュリティを上げることができる
セキュリティ対策にはコストがかかりますが、倉庫を24時間体制で監視でき、火災だけでなく盗難や不法侵入対策にもつながるため、費用効果の高い施策です。一度検討することをおすすめします。
まとめ
倉庫火災が起きる原因としては、電気機器や保管物の管理不足や、不適切な工事作業、放火などの人的なものなどが挙げられます。ひとたび火災が発生すれば自社だけでなく近隣住民や関係先企業へ影響するため、十分な対策を行って未然に防ぐことが大切です。
まずは、すぐに取り組める対策から実施してみましょう。
協和建設株式会社では、用途や立地条件に応じて最適な倉庫設計を行い、火災リスクに配慮した安全性の高い設計を提案することが可能です。新設・改修を検討している方は、ぜひ一度ご相談ください。